プロの仕事にお金を払いたい

行くたびにお客さんが多いそば屋を見ていて、何がこれだけの客を集めるのだろうかと考えてみる。清潔な店舗、大人の店という雰囲気、うまい蕎麦、価格。もちろんこういった要素は全て合格点を満たしているわけだが、もうひとつ感じたのが安心感だ。カウンター越しにオヤジさんが調理をする姿を見ていると、厳しさと余裕のなかに経験の長さが感じられて、プロの仕事をしているなぁと思わせる。次から次に注文が入っても、少しもオタオタする様子もなく、黙々とひとつずつ丁寧に仕上げていく。そういう姿は見ていて実に気持ちがいい。これほどスマートにできるのは、蕎麦を客に振舞う経験を何十年も重ねてきたからだろう。

ソフト開発の場合、開発のたびに言語やDBが違ったりする。また業種も違えば、作るソフトの内容も全く違う。これだと、経験が分散してしまい、なかなかそば屋のオヤジみたいな強みを発揮しづらい。だから、できることなら大きな顧客をつかまえて、継続的に同種の仕事をつないでいくことが望ましい。ただ、そこに偏ってしまうとつぶしが利かなくなるという面もあるので、そこはきちんと見極めなければいけない。営業的に安定していても、技術者としての価値が上がらない仕事なら、その人を潰してしまうことにもなる。COBOL技術者がオープン系全盛の時代になって苦しんでいる現状を見ればそれは明らかだろう。

お客さんは熟練工にお金を払いたいと思う。その熟練工になるためには相当の時間が必要。だから、価値の高い自分を作ろうと思ったら、自ら積極的に経験を積むように努力することだ。最近は就職後、早々に辞める人が多いようだけど、こういう観点から考えると、それはいい選択とは言えないのかもしれないよ。