運を掴む/横内祐一郎

運を掴む―弱小の会社を世界一にした男の物語

運を掴む―弱小の会社を世界一にした男の物語

グレコ」「イバニーゼ」で有名なギターメーカー「フジゲン」横山社長の物語。家の事情で仕方なく家業の農家を継ぐことになった著者。初めは嫌々ながらだったこの仕事も、好奇心を持って探求してみると実に興味深い。専門書を読み、やり方を変えることで、農作物や乳牛が持つ能力をどんどん引き出し、収穫量を上げ、成功をおさめていった。

農業を一生の仕事にしようと思っていた矢先、有名な農業経済学者の講演会で、これからの農業に未来はないという話を聞く。これをきっかけに、転身を決める。

富士弦楽器は、はじめはバイオリンを製造するも、市場性のなさにギター製造への方針を転換。ギター作りの経験など皆無の状態からのスタート。当時、ギターの供給不足だった時代背景も手伝って、販売直後の注文数は一気に三千本。6ヶ月間必死で製造して出荷するも、音が合わないクレームで千本が返品され経営危機に陥るが、大学の先生から音階理論を学び、製品の改良に努めることでなんとか乗り切る。

国内での成功にとどまらず、海外進出をもくろみ、単身渡米。言葉の壁に途方にくれるも、親切なアメリカ人夫婦に英語を教えてもらったことで、ようやく営業活動ができるようになり、成功をおさめる。

今、自分にないもので勝負するというのは、非常に怖い。年を重ねるほどに、未知のことにチャレンジするというのは億劫になる。若い時ほど、失敗に対しておおらかに見てもらえないし、恥をかきたくないというプライドもある。

しかし、そこでとどまってしまっては、自分で自分の世界を狭くしてしまう。横山社長は農業においても、ギター会社にしても出発点はまったくの素人。誰だってはじめはそうだ。失敗を成功につなげようとして努力するから、プロになっていく。これが大事。

以前から、アメリカに行って仕事がしたいと考えているが、この本を読んでますますその思いが強くなった。人生は一度きり。なんとかして、アメリカへ行く機会を作らねば。