お願いだから出てきておくれ

私のオヤジは長男です。
長男の宿命と言えば・・・

そうなんです、祖父、祖母の面倒をみるために
実家へ帰ることになったんです。

その頃、わが家には真っ白でとてもきれいな
おばあちゃん猫がいました。

私はその猫が大好きで、とても可愛がっていました。

私はその猫も一緒に連れて行くと言いました。
でも、両親は反対しました。

なぜなら、その猫はわが家の猫ではなく、ご近所さんの
猫さんだったからです。

私が可愛がるものですから、いつしかうちに居つくように
なったのですが、本来はよそのお宅の猫さんです。

それを勝手に連れて行くわけにはいきません。



いよいよ、お別れの日がやってきました。
引越しの荷物も積み終わり、迎えの車もそこに来ています。

最後のお別れです。
私はしろを抱き上げて、最後のお別れをするはずでした。

でも、しろはいつもと違う雰囲気を感じ取ったのでしょうか
私が捕まえようとすると、さっと逃げて車の下に入り込んで
しまいました。

呼んでも呼んでも出てきてくれません。

出発の時間が迫ります。

しろ、出ておいで。
もう会えないんだから。。。しろ、しろ

でも、しろはこちらを見つめたまま、動こうとはしません。

・・・しろ

もう、お別れの時間です。

さようなら、しろ。
元気でいるんだよ。
バイバイ。



後日、近所の人から聞いた話です。

角を曲がって現れた人影をうちのオヤジと間違えて
しろが駆け寄ってきたそうです。

ただただ泣けました…