日本を二流IT国家にしないための十四ヵ条/木下敏之

日本を二流IT国家にしないための十四ヵ条

日本を二流IT国家にしないための十四ヵ条

佐賀市長が佐賀市役所の基幹システムをダウンサイジングしたときのお話し。韓国のIT事情を視察して、すっかり魅せられてしまった元市長は、韓国の情報モデルを佐賀市に持ち込む。一般的には3〜4年かかるといわれる基幹システムのダウンサイジングを、サムスン社の手によって1年で完成させたらしい。

今までの古い悪習を断ち切って、新たな取り組みを成功させたことは素晴らしいと思うが、あまりにも韓国に肩入れしているところに違和感を覚える。競争原理を持ち込まなければ良くならないという主張は正論であるが、自治体という性格上、地場企業の育成に寄与することを忘れてはいけないはずである。

地場企業を甘やかせと言ってるのではなく、規模の小さい地場企業にもその競争に参加できる仕組みづくりが必要ではないかということである。一年という短納期で基幹システムのダウンサイジングをやるなど、おのずと参加できる業者は限られてしまう。

地場企業が受注したということも書かれてあったが、保守と改修業務である。技術者は、ものづくりの工程を経験することで力がついていく。わからないものを、いかにしてわかるようにするかで苦労するから、壁を乗り越える力がついてくる。保守のような守りの仕事では力がつくものではない。その仕事をやることで、企業の競争力が上がっていくとは思えない。

地場企業育成の視点が今ひとつだったことを除けば、あとは先進的ですばらしい取り組みだと思う。無駄を省いて、サービス向上に努めることは民間企業であれば当たり前のことであるし、時代とともにそれに合った仕組みに変えていくのは自然なことだと思う。それを強力なリーダーシップで推し進めた木下氏は評価されるべきであろう。