値引き

先日、初めての取引をする会社の営業マンから値引きのお願いがメールで届いた。「見積もりの件ですが、内税の○○円でお願いできませんでしょうか?(無理を承知で記入しています)」と書いてある。私は、返事を書くのに2日かかった。金額で言えば、その差額は2万円程度。たいした金額じゃない。でも、あっさりと受け入れるのには抵抗があった。

初めての取引でもある、簡単に受け入れては今後も値引きに応じてくれると思わせてしまうのではないか?初めての取引だから双方に信頼関係があるわけでもない。これからそれを作っていこうというのに、値引きを要請してくるとなると、社内的にもその会社に対する印象は良くない。相手は金額のメリット以上に、信用を落とすというデメリットの方が大きいのではないか?それを受け入れてしまっていいのだろうか?

値引きはお願いだった。なんらかの根拠をもとに交渉してきているわけではない。そうなると、こちらとしてもさじ加減ひとつだ。論理的に納得することはできないのだから、ただ相手の心情を受け入れるかどうかというところになる。

ここはけじめをつける意味でも断る方がいいだろうと考えていたのだが、ふと思った。この考え方は相手を疑っているところからスタートしていないだろうか?今回、値引きを受け入れたら、次も値引きを言ってくるようになるだろうとか、この値引きは自分たちが利益を増やすためだけに言ってきているのではないかなど。。。初めての取引でもあるし、慎重になるのはわかるけど、私が「疑う」からスタートしていては今後うまくやっていけないのではないかと思った。

今回の値引きの件を「信じる」からスタートして考えてみれば、あのまま発注していたら赤字だったのかもしれない、まだまだ創業間もない若い会社だ、ほんとに苦しい台所状況なのかもしれない。まずは実績作りからということで、自分たちの利益を度外視で無理をしているのかもしれない。

「疑う」と「信じる」では、180度見え方が違う。私は今回、値引きを受け入れることにした。「信じる」からはじめてみようと思った。会社は生き残ってナンボ。誰かに必要とされる会社であれば、必ず誰かが生かしてくれる。目先のお金にとらわれることよりも、ひとりでも多くのお客様に必要とされる会社であろうと思った。まずは、お客様の要望を受け入れることからはじめる。黙っていても、利益は後から必ずついてくる。そう信じたい。